TEAM SHACHIのニューアルバムを聴きながら走っていたらうっかり自己ベストを叩き出した話
ランニングのお供に”TEAM”を聴いてみよう
明日発売予定のTEAM SHACHIのファーストフルアルバム”TEAM”が家に届いた。僕は基本的にCDは買って聴ける状態になるまでは情報を積極的には入れないタイプなので、とりあえずiPhoneにダウンロードをし、そこで初めてきちんと収録曲そして収録時間を見る。すると収録曲は14曲、収録時間は約55分と出ていた。これならランニング中に聴くのに丁度いい時間だなと思い(そして”TEAM[秋本帆華盤]”のソロ曲”まってるね”はフルマラソンを走った時の心境を歌にしたものだということを思い出し)、いつもの運動着に着替え、いつものように、ナイキランニングクラブ(以下、NRC)を起動し、いつもとは違い”TEAM”を再生する。
この時点では聴き終わるタイミングで丁度10キロ走り切るか走り切らないか位かの感じで走るつもりだった。
ところで、僕は気が向いたらランニングをする。ランニングをする際には何となく10キロ50分以内で走るという目標を立てながら走るのだが、一度も達成できたことはない。大体最後8キロあたりでペースが落ちてしまうのだ。
なので今回も走るときにはその目標がふと頭をよぎったが、今回はアルバムを聴くのがメインなのでそれはどうでもいいと思い直しスタートを切る。いつもiPhoneで音楽を聴くときはシャッフルをするのだが、今回は何となくアルバムの曲順で聴いてみることにした。
1曲目:POSITIVE BEAUTIFUL!〜後ろ向きま宣言〜
まず、最初に流れる曲だ。タイトルからかなり激しい(誤解を恐れずに言えばうるさい)曲なのかと勝手にイメージをし、身構えていたのだが、そんなイメージとは裏腹に比較的落ち着いた、それでいて極端なバラードという訳でもない走り初めにピッタリの曲であった。
2曲目:HORIZON
徐々に体が温まってきた頃に流れる曲。”HORIZON”の力強いメロディーで、身体の奥深くから気力が漲ってくる。実際、僕が走るコースは最初の750メートルは下り坂が多く、最初の1キロ地点と1.5キロ地点でのペースが大きく異なるということが往々にしてあるのだが、今回はタイムに差が殆どなかった。
3曲目:番狂わせてGODDESS/4曲目:AWAKE /5曲目:Rocket Queen feat. MCU
2キロ地点に差し掛かり、徐々に走ることに身体が慣れてきたときに流れるのがこの3局だ。アップテンポなメロディーと女性ボーカル特有の伸びやかな歌声でどこまでも走り続けられそうな感覚にさせてくれる。実際、走っている時に一番気持ち良い感覚で走れたのはこの3曲が流れていた時だ。
6曲目:SURVIVOR SURVIVOR /7曲目:MAMA /8曲目:JIBUNGOTO /9曲目:HONEY
”どこまでも走り続けられそうな感覚”はやはり”感覚”でしかない。4キロを過ぎた辺りから明らかにペースが落ちてきた。今日は流すと決めていたとはいえ、ペースが落ちるというのは気持ちがいいものではない。何となく焦る気持ちになった時に、これらの曲が気持ちを落ち着かせてくれた。その結果、焦りから生じる無理なペースアップで余計な体力を消耗せずに済んだ。
7キロ経過時点で時計を確認すると34分50秒台のペースだった。残り3キロを15分丁度で走れば10キロ50分以内で走れる計算になる。しかし、計算はあくまでも計算だ。今までの僕のランニング経験上ここから1キロを5分で走れたことは、ない。
まぁこんなもんだろうなと思いながら流れてきた次の曲が大きく潮目を変えることになる。
10曲目:かなた
走りながら鳥肌が立ったのは今回のこの曲以外、記憶にない。そもそもこの曲は音源化される前からライブやYouTubeで聴いていて、希望に満ちた世界へと連れて行ってくれるような歌だという印象を持っていた。そして今回走っている時に聞いた”かなた”は優しく寄り添って伴走をしてくれるような感覚に陥った。
11曲目:こだま
”かなた”が優しく寄り添って伴走をしてくれる曲であるならば、”こだま”は力強く激励をしてくれる曲だ。キャッチーな歌詞と激しいメロディが、一歩一歩前に推進する力を与えてくれる。
曲が終わったタイミングで再び時計を見る。終盤でバテガチな僕でも10キロ50分切りが決して非現実的ではなく、手が届くところにまで来ていた。
12曲目:Rock Away
この曲は配信開始日が2019年7月と本アルバムの中でリリースが最も古い曲である。そして、Apple Musicによれば毎年聞いた曲の中で上位100曲にランクインすをするし、ランニング中にシャッフル再生で流れてきたことも一度や二度ではない、勝手知ったる曲でもある。すなわち、この曲が流れている時、どういうスピードを出せばいいのかはある程度把握している。ここでまた少し気持ちを落ち着けることができたのは本当に大きかった。
13曲目:Today
時計を見るとこの曲が終わるまでに残り800メートルを走り切れば10キロ50分切りという大台が待っている。本アルバム唯一のバラードということもあり、気分は完全に20時50分に日本武道館へと向かって走る24時間マラソンランナーだった。
そして
ついに目標だった10キロ50分切りを達成した。よかった。
M14:まってるね(秋本帆華盤)/Rainbow
クールダウンのストレッチをしながら”まってるね(秋本帆華盤)”、”Rainbow”を前者はそもそもランニングの〆に聴こうと思っていたのだがストレッチ中に聴くことになるとは思わなかった。走っている最中に流れてきたら多分最後の力を振り絞れるだろうなとは思う。後者はJ-POPの王道といった感じの曲だったので聴いているだけで心地よく、ぼんやりと何も考えずにストレッチをすることができた。
終わりに
なぜ自己ベストが出せたのだろうということを考えるに、まず第一にTEAM SHACHIだからというのはあるだろう。好きなアーティストの曲を聴きながら身体を動かす。これでモチベーションが上がらない理由を探す方が難しいのではないだろうか。加えて、TEAM SHACHIには”ブラス民”がいるのも大きい。高校野球に吹奏楽による応援が欠かせないように身体を動かすという行為と金管楽器の相性はブリと大根のように最高なのだ。
しかし、最も大きな要因として、アルバムの曲順が抜群に良かったからというものが考えられる。もちろん、今までもTEAM SHACHIも含めて好きなアーティストの曲しか流さずにランニングはしていた。しかし、僕は自分が作成をしたプレイリストを無造作にシャッフル再生で流す、というものだったのでやはりランニングと相性の悪い曲も出てくる。その時にそれをスキップするのは(誠に身勝手ながら)ストレスを感じてしまうのだ。
今回の”TEAM”は今まで書いた文を読んでいただければ分かるように、ストレスを感じるようなところがどこにもなかった。ここまでストレスを感じなかったアルバムは珍しい。
そんなアルバム”TEAM”の本日発売になる。本当におめでとうございます。これからも応援をしていきます。
何の為の闘いか
葛藤
どうにも興味が湧かない。オリンピックの競技種目の一つ、野球の話だ。僕は自他共に認める野球ファンで、こういった国際大会も大好きなので本来はもっとワクワクしていてもおかしくない。ところが、今回のオリンピックに関しては”結果とかはマジでどうでもいいから、選手たちが怪我をせず、誰の評価も落とさないまま無事に帰ってきて欲しい”という感情しか湧かないのだ。北京オリンピックの時にはー当時まだ中学生とはいえーそのような感情を抱くことはなかった。ではなぜそのような気持ちを今回は抱いたのだろう。
ひとつには野球の国際大会が当時とは比べて充実してきたことが挙げられる。当時プロが出場するオリンピック以外の国際大会といえば生まれたてのWBCしかなかった。当時のWBCは初のMLB選手も参加ができる国際大会だったとはいえ、あまりにもMLB主導であり、かつ当のMLBの選手たちにもあまりやる気が感じられなかったー例えば敗退をしたチームの選手が”いいスプリングトレーニングになった”と言ったり、日本でもイチロー、大塚晶則以外のメジャーリーガーは軒並み辞退したー。故に、記念すべき第一回大会で優勝をした日本もオリンピックで金メダルをとってこそ真の世界一といった風潮があったと記憶している。
しかし、その後WBCは様々な課題ー例えば収益の分配があまりにも不平等であることーといった課題を抱えつつも、アメリカなどMLB在籍選手を多く抱える国が人選にこだわるようになり、大会としては着実に成長をした。すなわち、MLB選手も入り混じった本当の意味での世界一を決める大会が出来上がってしまったのである。
また、大会方針そのものへの疑問もある。今回の東京オリンピックでは過去のオリンピックで採用されていた総当たり予選→上位チームによる決勝トーナメントではなく、負けたとしても敗者復活戦で勝ち進めば金メダルが取れる可能性がある*1。これを知ったときの僕はあまりにひどいシステムだと思った。この方式はWBCのように予選ラウンドまでなら総当たりのように様々な国と試合ができるメリットと一発勝負の緊張感というメリットが組み合わさって良いと思う。しかし、決勝ラウンドにまでこの方式を持ち込んでしまえば、一発勝負の緊張感は完全に薄れ強いチームが順当に勝つ可能性が高いだけの大会になってしまう恐れが非常に高い。
これは僕の私見なのだが、国際大会があそこまで盛り上がりを見せる理由は一発勝負
故に起こる”番狂わせ”や”魔物”の存在が大きいからだと考えている。その点につき、僕は今回の大会はそれが起こりづらいのではないだろうか。そしてそのような大会に佳境に入るペナントレースをわざわざ中断してまで行う意義はあるのだろうか。
総括
要するに、僕がオリンピックの野球にまるで興味が湧かない理由は
- オリンピックが世界一を決める大会では無くなったこと
- 大会の運営自体に不満がある
この2点である。東京オリンピックを開催するにあたり、競技種目の一つに野球を復活させた以上はオールプロで臨まないわけにはいかないのだろう。しかし、それでも尚釈然としない感情がどこかには、ある。例えば2000年シドニーオリンピックのように、アマチュア中心の編成をしてプロ野球選手は数名というような編成はできなかったものか。国際試合が充実しているプロ野球選手とは異なり、オリンピックという日の目を見る舞台にアマチュア選手を起用することでアマチュア野球の注目につながり、ひいては野球界の発展にもつながると思うのだが…
敬意の再確認
2021年7月8日、大谷翔平が32号ホームランを放ち、日本人最多であった松井秀喜の記録を更新した。オールスター前に32本という数字はとんでもない。MLBのホームラン争いでもトップを走っている。しかも大谷は”二刀流”だ。誰がこんな成績を予想しただろうか。僕は予想できなかった。早くも本拠地エンゼルスタジアムでは”MVPコール”が響いている。今や大谷は押しも押されぬエンゼルスの、いや、MLBの看板選手となった。彼は一体どこまで行くのだろう。
その一方で、僕が改めて感じたのが”はじめの一歩”を踏み出した選手への敬意だ。あの時ーとはいっても僕は生まれていないので直接は知らないがー、野茂英雄が任意引退選手にまでなってMLBに挑戦をしなかったら、日本人選手がMLBに挑戦をし、通用するなんてきっと想像すらできなかっただろうー完全に余談だが、”MAJORという野球漫画がある。連載開始が’94年の8月3日だ。この時、超一流のメジャーリーガーがやって来て舐めプかましても日本人選手たちは手も足も出なかった。当時の日本が持つMLBへのイメージを想像できるー”。イチローがあまねくMLB記録を塗り替えなければ、日本人が野球でMLB歴史に名を残すことができるなんて、夢物語で終わっていただろう。松井秀喜がヤンキースで4番を打たなければ、MLB屈指の伝統を誇り、しかもスーパースターが勢揃いの中で主軸を務めるなんて全く現実味がなかったであろう。
僕も大谷と同じ時代に野球少年だったから多少は分かるのだが、野球少年の頃に彼らに代表される多くの日本人選手の活躍を見ていたから、MLBまでの距離が測れるようになったのだと思う。”夢はMLB”というのが全くの夢物語ではなくなっていた。彼らがいなったら、今の大谷翔平はいただろうか?追い越してはじめて分かる先人の偉大さというものは確実に、ある。
もちろん大谷だって”はじめの一歩”を間違いなく踏み出している。そう、二刀流だ。これまでの野球界ではちょうど高校生が文理選択をするのと同じように、投手と野手どちらで行くのかを決めなくてはならない、というのが常識であった。ところが大谷はMLBという野球最高峰の舞台で二刀流で結果を示している。今後ーとはいっても10年は見ないといけないだろうがーは二刀流の選手は増えていくだろう。中には大谷の成績を凌駕する選手も出てくるはずだ。そんな時に僕は大谷が抜かされたことを嘆くのではなく、こう思うだろう。”大谷がいたからこそ、この選手はここまでこれたのだ”と。
それは破壊か、革新か。
⒈はじめに
”元サヤ”という表現が正しいのだろうか。ヨーロッパスーパーリーグ構想(以下ESL)の話だ。2週間前はあれほどの議論がされていたにも関わらず、今となっては普通にチャンピオンズリーグ(以下CL)も、ヨーロッパリーグ(以下EL)もヨーロッパの国内リーグも行われている…。表向きは。けれど、一度吐いた唾は飲み込めない。ESL構想に参加したクラブの多くのファンー特に国内ファンーは自らが応援しているクラブへの不信の火種が未だ燻っているようにも思える。かくいう僕も、ESL構想で海外サッカーから距離を取ることを決めた人間の1人だ。
本記事は今回の騒動ーすなわち、ESL構想ーが、ヨーロッパサッカーを”破壊”するものなのかそれとも”革新”するものなのか、というのを自分なりにまとめたものだ。僕は専らプレミアリーグを中心に見ており、他リーグのことは詳しくない。かつ、サッカーを本格的に観るようになって日も浅いのでもちろん長くサッカーを観てきた方にとっては”浅い”と思われる部分もあるかもしれない。そこは”あぁ、こんな意見もあるのね”程度に思っていただければ幸いだ。
⒉事実の概要
噂には聞いていた。どうやらヨーロッパの金満クラブたちが今のCLのフォーマットに不満を抱き、独自のシステムを作ろうとしているらしいと。しかし、一方ではCLを運営しているUEFA及びその他のクラブの反発が予想されるので、実現は難しいだろうという話も耳にはしていた。実際問題として、これ以上試合日程を増やすのは選手たちの身体のことを考えても得策とは言えない。また、問題が指摘されているとは言え、CLだって十分にオカネは稼げるー優勝すれば約100億円以上*1ーのだ。
だから僕は当初この報道は楽観的に、ある種の夢物語的なものだと思って見ていた。だが、2021年4月19日、風向きが変わる。なんの予兆もなくいきなりESL構想が発表されたのだ*2。参加を表明したのは、プレミアリーグからはアーセナル、チェルシー、リヴァプール、マンチェスター・シティー、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムの6クラブ。セリエAからは、ACミラン、インテル、ユヴェントス。ラ・リーガからはアトレティコ・マドリード、バルセロナ、レアル・マドリードの計12クラブ。この12クラブがメインとなり後から3クラブが合流。さらに各国リーグで好成績を収めた5クラブの計20クラブでESLを行うというものだ。
これに反発をしたのは他ならぬ12クラブのファンだった。当初は強硬的な姿勢を見せ、欧州クラブ協会を脱退したプレミアリーグのクラブ達もファンの抗議を受けわずか2日後の4月21日にはプレミアリーグのリーグの6クラブはESLからの脱退を表明*3した。この後もESLからの離脱を表明するクラブが相次ぎ、事実上ESL構想は頓挫をした。
では、今回のESL構想は何が問題だったのだろう。僕は大きく分けて2つの問題があると思う。1つは彼らがやろうとしていたことは”ヨーロッパ型スポーツ文化の破壊”であった点、そしてもう1つはあまりにもファンの心理を軽視しすぎた点にあると思う。
⒊ヨーロッパ型スポーツ文化の破壊
報道によれば、今回のESL構想のスポンサーはJPモルガンだという。また、ESL構想を主導したと言われているレアル・マドリード会長のフロレンティーノ・ペレス氏はかねてより”アメリカ型”スポーツのようにヨーロッパサッカーをしていきたかったようだ*4。
ではまず、”アメリカ型”スポーツと”ヨーロッパ型”スポーツを比較してみよう。”アメリカ型”のスポーツの大きな特徴の一つに”昇降格がない”という事が挙げられる。確かにアメリカ4大スポーツと呼ばれる野球、ホッケー、バスケ、アメフトにはそれがない。これによって各クラブは例えば降格による減収の不安に苛まれる事なく安定した経営を見込めるー余談だが、アメリカのサッカーリーグは昇降格がない。なんでもアメリカナイズしてしまうその精神には感心させられてしまうー。逆に、ヨーロッパサッカーには昇降格がある。これは降格による減収の恐怖があるが、逆にそこにとどまり続ける事がクラブのブランド力を高めることにつながる。
アメリカ型もヨーロッパ型もどちらがより優れている、劣っているということはない。お互いそれぞれのやり方でお金を稼げばいいのだ。
ところが、ESLはヨーロッパ型の文化のところに、一部のアメリカナイズされた考え方の経営者たちが、無理矢理アメリカ型の文化をねじ込もうとしたのだ。
何の理解も得ようとせず建前だけはキレイゴトを並べ、そして根ざしていた文化を破壊しようとする。時代が時代なら戦争の火種にもなりうる行為だ。この点につき、やはりESL構想は間違っていたと言わざるを得ない。
そしてもうひとつ。何よりも由々しき問題だと感じたのがファン心理の軽視だ。
⒋ファン心理の軽視
ESLのお題目はESL会長のペレス氏によるとこういうものらしい。
「サッカーは40億人以上のファンがいる唯一の世界的スポーツであり、私たちのような大規模クラブには、そうしたファンの求めに応じる責任がある」
なるほど、確かに世界中にファンはいるし、サッカーのW杯の盛り上がりは半端じゃない。しかし、本音はどうなのだろう。こういった報道がある。
一部のオーナー達はコミュニティに根付いてスタジアムに足を運ぶ地元サポーターを「レガシー・ファン」と呼んでおり、それよりもスター選手が見たいといわゆる「将来のファン」を優先したい。
スーパーリーグ側が言うには、こうしたら下のチームにももっとお金が回っていく。
僕が今回のESL報道で一番承服できなかったのは実はここだ。「レガシー」なんてちょっといい言葉風にしてはいるが要するに国内ファン、それも地元ファンに対して「アンタら金にならんもん。別に切ってもええやろ」 といっているのだ。
例えばイギリスのサッカーリーグは1888年に始まった。日本で大日本帝国憲法が発布されたのは1889年だ。つまり日本がようやく欧米のような国家になりつつある時にはもうすでにサッカリーグは存在していたのだ。そこから数えて130年余、ずっとイギリスにはサッカーが根付いてきた。僕も2回ほど現地でプレミアリーグを観戦した事があるが、彼らにとって、サッカーとは単なる”娯楽”ではなく、”日課”になっているのだと感じた。それを経営陣は”レガシー”で片付けてしまったのだ。そんな傲慢な話があるだろうか。百歩、いや1億歩譲ってその文化を知らない外国人の経営陣は仕方がないとしよう。だが、イングランド人オーナーがそれに乗っかってしまったのは本当に失望したーダニエル・レヴィ、お前のことやぞー。これはあまりに不誠実であり不勉強であったと思う。
⒌終わりに
僕がスポーツを好きなのは、選手たちの素晴らしいプレーに魅了されることもさることながら、それを応援する一人一人の人生と交点が出来る感覚が好きだからだ。ー親の影響で、ー辛い時にこの選手のプレーが励みになったから、ー好きな人が好きって言ってたから。きっかけなんてほんと人それぞれだ。育ってきた環境も、年齢も、性別も、国籍も、人種も違う。そんな人たちが一つのプレーに夢中になって同じ感動を共有できる。その瞬間、人生に交点が出来る。そんなに素晴らしいことは世の中数少ないと思う。だから、スポーツを観るのだ。
その最たる例がプレミアリーグだと思っていたから、僕はプレミアリーグを観ていた。
だが今回のESL構想によって萎えてしまった。結局、僕のそんな気持ちは一部経営陣の金儲けの道具にしか過ぎないと感じてしまったからだ。
誤解しないで欲しいのは、僕は何もスポーツによる金儲けを否定しているわけではない。規模が大きくなればなるほど雇用する人数が増えて、たくさんのお金を稼がなくてはならないのは至極当然のことだ。だが、それでも金儲け以上に大切なこともある。ESL構想はそれを見失ってしまったから頓挫したのだ。
もちろん、なぜ今回のことが起こってしまったのか、起こしてしまったのかを双方の立場から検証する必要はある。だけれども、金儲けしか頭になく、大切なものを蔑ろにしてしまったESL構想は、やっぱり”革新”ではなく”破壊”なのだ。
*1:
チャンピオンズリーグは“お金”もスゴイ 本戦出場するだけで○○億円ゲット?! | サッカーキング
*2:
サッカーで「欧州スーパーリーグ」創設、英強豪含む12クラブが合意 FIFAなどは反対 - BBCニュース
*3:
プレミア“ビッグ6”はESL撤退へ…マンU、リヴァプール、アーセナル、トッテナムも正式表明 | サッカーキング
*4:
破綻したサッカー欧州スーパーリーグ構想の背後にJPモルガンのなぜ | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン
*5:
同じ情報源によると、一部のオーナー達はコミュニティに根付いてスタジアムに足を運ぶ地元サポーターを「レガシー・ファン」と呼んでおり、それよりもスター選手が見たいといわゆる「将来のファン」を優先したい。
— Ben Mabley(ベン・メイブリー) (@BenMabley) 2021年4月19日
スーパーリーグ側が言うには、こうしたら下のチームにももっとお金が回っていく。 https://t.co/NKQda9aavD
白鳥が羽ばたいた日。
1274日
1274日。この日数が何の数字なのかを即座に言い当てられる人がいるだろうか。ピンと来ない人が多いだろう。では、その1274日の起算点が2017年9月22日だと言えば、あるアイドルグループファンの方々は思い当たる節があるのではないだろうか。そう、2017年9月22日はアイドルグループ”SMAP”の元メンバーであり、ジャニーズ事務所から独立をした稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾がファンクラブサイト「新しい地図」の立ち上げを公式に発表した日である。
その日から数えて1274日目の今日、草彅剛が自身の主演映画”ミッドナイトスワン”で主演男優賞及び最優秀作品賞を受賞した。この映画は今現在も公開されており、さらには”追いスワン”なる造語もできるほど”静か”に、だが確かに広がっていった。
この映画の内容に関しては多くの方がSNSで伝えており、僕もそれに概ね同意するので、そこに関しては詳述はしない。それよりも僕は、この受賞によって今までの”1274日”について考えたい。
さて、1274日、言い換えると約3年半。この期間を短いと捉えるだろうか。それとも長いと捉えるだろうか。ファンでない方からすれば、独立をして3年半でこのような晴れ舞台に立っていることは短いと思われるかもしれない。しかし、ファンー少なくとも僕ーにとって、この3年半というのはあまりにも長かった。この間新しい地図の面々の地上波レギュラー番組はことごとく消滅。毎年1クールは確実に出演していた地上波の連ドラもすっかりご無沙汰状態になってしまった(2021年1月クールで香取慎吾がテレ東の連ドラに主演したが、2016年1月以来の連ドラであった)。
この間彼らはインターネット番組に活躍の場を求め、また、映画や舞台にも積極的に出るようになった。しかし、多くの人ー特にファンでない方々ーにとって、その情報は入ってこなかったのではないだろうか。それも仕方がないことである。なぜなら宣伝
をする場所が与えられていなかったから。
その原因とは何か。真相は分からない。ただ、事実としてファンでない人たちがー自発的に調べない限りー彼らの活動を知る機会が極端に減ったのは確かだ。
今回受賞した”ミッドナイトスワン”も、他の優秀作品と比較するとわかると思うが、スポンサー、大きな映画会社はつかなかった。(CULENは草彅が所属している事務所。)
30年以上、そしてその大部分を”国民的アイドル”として過ごしてきた彼らがこの扱いを受けるのである。投げやり、自暴自棄になってもおかしくない。というか僕なら恐らくそうなる。しかし、彼らは違った。ー内心は分からないがーそのような素振りも見せず、新しいことに挑戦したり地道に仕事をこなしてきた。その結果が、今回のクチコミによる大ヒット、そして受賞なのだろう。今回の受賞に関して異論を挟む人はー恐らくー誰1人としていない。
現代社会の風潮として、”効率”や”コスパ”が重視され、反対に”誠実”や”愚直”と言った言葉は軽視されがちな所もある。僕自身も前者をついつい意識してしまうところがあるが、今回の草彅の受賞は、後者の生き方も捨てたもんじゃないとそう思わせてくれた。
「諦めたりしないで一歩ずつというか、たまに振り返ることもあると思うんですけど、またそこから少しでも進むと、何かいい事がある」授賞式のスピーチで草彅はこう語った。その言葉は、1274日間、様々なことを経験し、乗り越えてここまでたどり着いた彼だからこそ出せる重みと、説得力があった。
雑にプロ野球を総括する〜2020〜
間が空いた。
最後にブログを書いたのが9月13日だったらしい。すっかり更新が滞ってしまった。この3ヶ月間に何があったのかというとまぁ色々あった。まだ詳しく書くつもりはないが、本当に色々あったのだ。そして気づいたら大晦日を迎えてしまった。
その間ブログで書こうかなと思っていたの題材はすっかり鮮度が切れてしまったが、それを書かないのも来年に持ち越すのもどうにも気分が悪い。と言うわけで、リハビリがてら書こうと思っていた2つのことを簡潔に書いていこうと思う。
コロナウイルスとプロ野球
なんだかんだでシーズンは完走できたし、有観客試合をすることもできた。懸念されていた球場クラスターも起きなかった。横浜スタジアムや東京ドームで行われ、一部では”人体実験”とも言われた観客増員は行政との絡みがあって中々NOを言うのは難しかったであろう。しかし、一方で選手及び監督の不手際が報じられた。特に12月の感染者増加が懸念されている時期に王貞治ソフトバンクホークス球団会長がいわゆる”ステーキ会食”に参加したことについては率直に憤りを感じぜざるをえなかった。王貞治といえば球界の尊敬を集めており、いまだに強い影響力を持つ人物である。そんな人物があの時期に会食をするー。それは謗りを免れえないだろう。
とはいえ、プロ野球全体を見れば及第点はつけていいだろう。何より球場でのクラスターが起きなかった事が大きい。僕も球場で観戦をしたが、下記のチラシを配るなどして球場及び球団は本当に細心の注意を払っていた。
ファンのマナーもマスクの着用は飲食の時を除いて徹底されていたし、概ね良かったのではないかと感じた。ただ一点気になったのは規制退場の時だ。僕の周りの席では規制退場のルールなんかお構いなしに我先にと出口へ帰る人が大半だった。そもそも規制退場の趣旨は座席ごとに退場をさせることで出口の混雑を防ぎ、いわゆる”3密”を作らない状態にする事であるはずだ。にもかかわらず、自分から”3密”の状態を作りにいくのは我々が好きな野球の評価を下げることにならないだろうか。
積極的な移籍市場の実現
惨敗。惨め。無惨。今年の日本シリーズを形容する際、悲しいかなこういった言葉しか出てこなかった。もちろんソフトバンクが圧倒的な戦力であったことは言うまでもない。しかし、仮にもセリーグ王者がここまで惨敗するものかと考えた時にある一つの仮説を立ててみた。もしかしたら、プロ野球全体で「若手積極起用主義」の弊害が出てしまっているのではないだろうかと。
ソフトバンクも、かつてセリーグ三連覇をした広島も高い評価を得ている理由として優勝したこととに加え、「生え抜き選手を積極的に起用した」という点に付加価値がついているのではないだろうか。確かに勝つことも重要であるし若手を登用してスター選手を起用することも大切だ。しかし、本来それらは別個の評価をすべきものであるはずだ。若手や生え抜きを起用してした優勝と、チームを強くするために補強をした優勝で後者の方が前者より評価が低くなると言うことは本来あってはいけないことだと考える。
僕は決して現在のソフトバンクや当時の広島を腐しているわけではない。そうではなく、圧倒的な育成力を誇るチーム相手に育成をした上で勝つのは相当な難易度をほこるのではないかという事が言いたいのだ。ならば、発想を変えて大型トレードなどを活用してソフトバンクに匹敵する戦力を整えればいい。2021シーズンで日本一を勝ち取るためには「育てながら勝つ」という固定観念にとらわれないことも大切なのではないだろうか。
終わりに
以上、今年のブログはこれにてお終いとさせて頂きます。来年も多分月1ペースで更新はしていこうと考えているので、お付き合い頂ければ幸いです。ありがとうございました。
サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー(終)
第5章 希望
「That's Beautiful」
2020年7月6日の対エヴァートン戦を勝利で飾った試合後、モウリーニョはこう言った。だが、これは決してその試合内容そのものを指したものではない。この発言は前半終了後、主将であるウーゴ・ロリスと孫興民が口論をしていたことを指している。本来なら試合中に選手同士が衝突することは好ましくないはずだ。ではなぜ彼はそれと真逆の形容詞を使ったのだろうか。これを理解するためにはロックダウン後のトッテナムを語ることから始めなければならない。
時を戻そう。トッテナムがCLで敗退をした直後、新型コロナウイルスの猛威が世界中を襲った。この影響で世界中のありとあらゆる活動がストップ。イギリスも例外ではなくロックダウンの措置をとり、これに伴いプレミアリーグもいつ再開できるか、全く目処が立たなくなった。この間、トッテナムはzoomを使いトレーニングを継続。モウリーニョが求めるサッカーを選手たちに落とし込んだ。また。シーズンが中断された事で伴い怪我で今季絶望と言われていたハリー・ケイン、ステーフェン・ベルフワイン、孫興民、ムサ・シソコの復帰が可能となった。
ーそう、モウリーニョが望む「仕切り直し」が実現したのである。ということはもうどのような結果になろうが「言い訳」はできない。とはいえ、この時点でトッテナムは勝ち点的に優勝は不可能。CL圏内の4位ですら奇跡という状況であるのもまた事実。果たして稀代の名将スペシャルワン・モウリーニョはロックダウン後どのようなサッカーを見せてくれるのか。”奇跡”を起こすための戦いが始まった。
再開後初戦となる対マンチェスター・ユナイテッド戦は1−1のドロー。続くウエストハム・ユナイテッド戦も2-0と勝利を収めた。一応は勝ち点を取り、CLへの望みはつないでいた。しかし、僕個人の感想を言えば決してチーム状態は良いとは言えないとは思っていた。なぜなら、ロックダウン前と今とで何が変わっているのかが分からなかったからだ。
そして対シェフィールド・ユナイテッド戦、トッテナムは1−3で敗北。この敗北はCL進出への挑戦が終わりを告げた敗北でもあった。この試合、トッテナムに同情すべき点がなかったとは言えない。0−1でリードをされていた後、ハリー・ケインが決めた同点ゴールはVARによってー疑惑のー取り消しがされた。しかし、そこから途端に相手優位な試合運びになるというのはどうにも観ていてフラストレーションが貯まるものであっった。それはモウリーニョも同感だったようで、試合後にはこんなコメントをしている。*1
あなたのチームのパフォーマンスへの評価は?
試合中に起こることに対処するために、我々はもっともっと精神的に強くならなければならない。マイケル・オリバー(VAR担当審判)の決定後に精神的に打ちのめされてはいけないんだ。
受け入れがたい判定だったのはわかっているし、周りにいた選手たちは何が起きて、何が起きなかったのかを知っている。あのゴールを祝い、ゴールだったと感じている。皆さんが気にしているのはそこだろ。
選手たちが歯がゆい思いをしたのはそうだろうが、残り50分間をもっと強く戦い抜かなければならない。試合の主導権を握り、ボールを保持し、チャレンジしていたにもかかわらず、それが後半のチームに対する私の批判だ。
「貪欲さ」とは言いたくないが、納得がいかない判定が下ったことで、我々はそういったものを失ってしまった。我々は、後半に圧倒的な支配をするほどには精神面に十分な強さを持ち合わせていなかったし、チャンスを作り出すためのシャープさとプレーの強度もなかった。後半の最後には、我々はボールを持っていたが、打開を一変させるほどのチャンスが作れなかった。
結局、トッテナムというチームの弱さはここにあると思う。貪欲さ。是が非でも逆境、理不尽を跳ね除けようとするメンタル。それが第2章でも触れた”勝者のメンタリティ”と言えるのではないだろうか。例えばリヴァプールやマンチェスター・シティが同じような状況で相手優位の試合運びになるだろうか?そんなことはないはずだ。
Amazon prime videoのドキュメンタリー、All or Nothingの予告編*2のミーティング映像ででモウリーニョはこんなことを言っている。「君達は”イイ奴ら”だ。でも、”イイ奴ら”は絶対に勝てない。」当然あくどい手を使ってでも勝てとかそんなMAJORの三船西中やら海堂高校の江頭みたいなことを言っているのではない。要はモウリーニョはイイ奴であるが故にお互いミスがあっても指摘しないというような姿勢を改めて欲しかったのではないのだろうか。予告編であるが故にー早く日本でも流して欲しいーモウリーニョが件の発言をしたのはいつ頃のことなのかは定かではないが、モウリーニョはこのことをずっと訴えているのではないだろうか。
だからこそ、「That's Beautiful」の発言が生まれたのだ。ちなみに、このエヴァートン戦の試合後、別のインタビューではこうも発言をしている。
ちなみに試合後、当事者のロリスも孫興民も特別なわだかまりはないと発言していたがそれはそうであろう。お互いが”勝つ”という方向にベクトルを向けている以上、そこからチームが崩壊するようなことはおそらくはないだろう。
そんなわけで、この試合は、モウリーニョイズムが浸透しつつあることを図らずとも内外に示した19−20シーズンのハイライトの一つともいえる試合となった。
終章 総括
その後トッテナムは残り5試合を3勝2分ー内2勝はレスター、アーセナルから奪ったものだーで終え、EL出場権を獲得してシーズンを終えた。
以上が僕がシーズンを通して観てきた19−20シーズン、トッテナムホットスパーの極々一部である。
オフシーズンのトッテナムはサウザンプトンからMFピエール・エミール・ホイビュアーを、バーンリーからGKジョー・ハートを、ウルヴァーハンプトンワンダーランズからDFマット・ドハーティーを獲得しー2020年9月13日現在ー、戦力に多少の厚みが出た。これでプレミアリーグ制覇を…と行きたいとこだろうが現実的にまだそこは厳しいだろう。まずは今シーズン、CL出場権を獲得し、そして何かしらのカップ戦を制覇するというのが現実的かつ理想的なシーズンなのではないだろうか。ただそこは手練手管、百戦錬磨のモウリーニョである。僕の現実的予想を裏切って、大いに躍進してもらいたい。
最後に、今シーズンの個人的なベストゲームとMVPを発表して締めとさせていただきます。
個人的ベストゲーム
対レスター戦(37節)
理由:これがモウリーニョのサッカーかというのを思い知らされた試合。ボール支配率は29%と低いにも関わらず危ない場面が少なく、3−0と完勝。ELに出場に大きく前進をした一戦となった。
個人的MVP
理由:怪我をしなかった。この一点で称賛されるに値すると思う。よく走るし、決定力もある。トッテナムにきてくれてありがとうな。
サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー④
第4章 手負い
エリクセンがインテルへと旅立ったのと時を同じくしてトッテナムにも新戦力がやってきた。ベンフィカからU21ポルトガル代表MFのジェドソン・フェルナンデスが、PSVからオランダ代表FWのステーフェン・ベルフワインが新たに加わった。両選手とも若く、今後のトッテナムを担うことになるであろう選手たちだ。我らがシブチン会長、ダニエル・レヴィの面目躍如といったところだろう。
とはいえ、冬の移籍で即座に結果を出せる選手は数少ない。今シーズンに関しては出番は少ないだろうが、半年かけてトッテナムというチーム、そしてモウリーニョが理想とするサッカーに馴染めて行けたらいいんじゃない?と思っていた。ところが、ベルフワインはデビュー戦のマンチェスター・シティ戦で先制点となる鮮烈なゴールを奪い、あっという間にトッテナムにおいて欠かせない選手となった。これにて冬の移籍市場は閉鎖。ここからは逆転でのCL出場を目指し戦っていくことになる ーそういやダニー・ローズがニューカッスルへレンタルで移籍した。さようならー。
しかし、トッテナムはここから上昇気流に乗らなければいけない時に乗りきれない。CLの対ライプツェヒ戦では合計スコア0-4と惨敗でベスト16敗退、FA杯も格下のノリッヂ相手にPK戦で敗退。プレミアリーグでは2020年初頭から3勝4敗3分とどう考えてもCLを狙うチームの成績ではない。
さて、これはモウリーニョ の責任なのだろうか。僕はそうは思えない。というのも、トッテナムが負ける原因は明白であったからだ。それは主力選手の相次ぐ怪我である。正月の対サウザンプトン戦でイングランド代表FWでありエースストライカーのハリー・ケインがハムストリングを裂傷し、今季絶望となった事に端を発し、フランス代表MFムサ・シソコが全治3ヶ月の大怪我、2月のアストン・ヴィラ戦で孫興民が骨折、そして3月のバーンリー戦では新加入のベルフワインも離脱をしてしまった。それも全員がシーズン絶望レベルの大怪我なのだ。
これは今シーズン急に降って湧いた問題ではない。残念な事に毎年恒例のことなのだ。我らがシブチン会長はとにかくお金を出さない。出さないから選手の獲得ができない、選手の獲得ができないから選手層が薄い。選手層が薄いから主力選手に負荷がかかる。負荷がかかると怪我の確率が高くなる。そして離脱をすると他の選手にさらなる負荷がかかる。
これが単にプレミアリーグのみの試合があるチームなら、許容範囲内だと思うと思う。しかし、ヨーロッパのカップ戦に出場するチームは1週間で3試合なんてザラにあるのだ。加えてプレミアリーグはフィジカルコンタクトが激しいリーグだ。選手を休ませなければそりゃ怪我しちゃうでしょーとはいえ流石にプレミアリーグも再考した方が良いのではないかと思う。10日で4試合とかどう考えてもクレイジーすぎるー。前監督のポチェッティーノは「ビッグクラブを目指したいならビッグクラブにふさわしい補強をすべきだ」と言っていたが、あのシブチン会長、少しは聞く耳を持って欲しかった。
そんなわけでこれはモウリーニョの責任ではないでしょうと思っていた。というか今シーズンはもはやシーズン完走が目標でしょというくらいに目標の下方修正を僕の中でしていた。
当のモウリーニョも「バルセロナにグリーズマン、メッシ、スアレス、が離脱して勝てると思うか?」やら「早くシーズン終わらせて7月1日になって欲しい。そして主力選手が揃った中でもう一度キャンプをして仕切り直したい」やら事実上の白旗宣言をするようになった。まぁ、途中就任でこんなにケガ人が出て、という難しいシーズンであったからこの発言も致し方ない、と僕は考えていた。
しかし、モウリーニョの願いは実に”奇妙”な形で叶うこととなる。
第5章→サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー(終) - charles262510’s blog
第1章→サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー① - charles262510’s blog
サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー③
第3章 別れ
E「俺、この街を出ていくよ」
T「そっか」
E「もうこの街でやりたいこともないしさ、新しい環境でチャレンジをしてみたいんだ」
T「まぁお前もこの街に住んで長かったもんな。いつ出ていくんだ?」
E「今年の夏には出ていくよ。俺はスペインで勝負したいんだ。」
T「そうか。世話になったな。時には俺たちのことも思い出してくれな」
E「もちろんさ」
T「さて、ボチボチあいつがいなくなった後のことも考えないとな」
??「あの〜』
T「E?お前どうしたんだ?」
E「残る」
T「え?」
E「出ていけなかったから残る」
T「お、おう・・・」
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このシチェーション、どちらの立場でも気まずい。これが2019年の夏にトッテナムで起こったクリスティアン・エリクセンの移籍騒動であるーお分かりかと思うがEはエリクセン、Tがトッテナムだー。
別にエリクセンのみを悪者にするつもりは毛頭ない。今回の移籍の件では我らがシブチン会長、ダニエル・レヴィが移籍金を釣り上げた影響で纏まるモノも纏まらなかったという報道もあった。
ただ、このことがクラブ悪影響を与えたことは否めない。ハリーケインは19年夏の契約が纏まらなかった選手たちがいたことによるチームへの悪影響があったことを認めていた。ファンも結局「え?なんであいつまだいんの」的なムードになってしまった。エリクセン自身もステップアップを望む発言をしてしまった以上、トッテナムと契約延長という線はなかったであろうー実際、モウリーニョが就任した日にエリクセンはモウリーニョに対し冬には出ていく旨を告げていたというー。トッテナムも、フリーで移籍されるよりは冬に買い叩かれてでもいいから放出するしかなくなってしまった。結局、冬にエリクセンはインテルへと旅立った。エリクセンマネーが欲しかったクラブ経営陣、チームのステップアップをしたい現場、スペインで勝負をしたかったエリクセンの三者が誰も得をしない結果となってしまった。
先述のように、今シーズンのトッテナムはエリクセンは近いうちにいなくなることが目に見えていた。故に今シーズンのトッテナムに課せられたテーマの一つには”脱・エリクセン”というものがあったと思う。エリクセンの最大の特徴というのは”違いを出せる”ということだと思う。加えて昨シーズンのトッテナムの総得点のうち88%は孫興民、ハリーケイン、そしてエリクセンが関わっていた。ポストエリクセンを見つけられなければ得点力が大幅に低下することが必至という状況であった。
しかし、なかなか見つけることができなかった。その努力を怠っていたわけではない。開幕前には後任候補としてジオバニ・ロ・チェルソを獲得したし、ポチェッティーノもモウリーニョもエリクセンの序列を下げてベンチにいる時間を増やした。それでも、前者は怪我の影響もあってチームにフィットするの大幅な時間を必要としたし、後者は劣勢になり結局エリクセンを出さざるをえない状況になり、結局エリクセンが得点に絡んで勝利もしくは引き分けという試合が12月ーつまりエリクセンが移籍をする直前であるーに入ってもあった。
トッテナムのエリクセン依存はー仕方がないこととはいえー深刻だなぁと思った。とはいえ、期待の新戦力、ロ・チェルソが冬にチームにフィット。すぐにエリクセンクラスになることは難しくとも、着実に”違い”を作れる選手になりつつあり、モウリーニョ の覚えもめでたくなった。少なくとも、以前ほどエリクセンがいればなぁというような状況ではなくなった。
しかし、一難去ってまた一難。トッテナムは次なる問題を抱えることになる。
サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー②
第1章→サッカー素人がみた19−20トッテナムホットスパー① - charles262510’s blog
2章 唯一無二
ジョゼ・モウリーニョがトッテナムの監督に就任する。このことはーリークがされていたとはいえーサッカー界に少なからず衝撃を与えた。なぜなら、トッテナムとモウリーニョをイコールで結びつける要素が何一つなかったからである。
トッテナムの会長であるダニエル・レヴィはシブチン・・・もとい倹約家で知られているーそもそも18−19シーズンの補強ゼロだって後述するエリクセンの去就だってこの人がもう少し柔軟ならよりマシな結果になっていたはずだ。一方で、モウリーニョは潤沢な資金によって整えられた豪華なタレント揃いのチームでタクトを振ることに長けている人である。馬が合うはずがない。モウリーニョはトッテナムに来た理由について、「このクラブについてミスター・レヴィ(ダニエル・レヴィ会長)が私に示した展望や選手とチームのクオリティが、私がここにきた理由の一つなんだ。それが私がここに来た主要な理由だ。」*1と言っていたが、水面下でどのような話し合いが行われたのだろう。
ー余談だが、モウリーニョのトッテナムでの肩書は”ヘッドコーチ”である。前任のポチェッティーノは”マネージャー”だ。どちらもニュアンス的には同じように感じるかもしれないが、前者は言うなれば”現場監督”、後者は”全権委任監督”を意味するのだそうだ。モウリーニョは割と補強とかにも口を出すイメージがあったが、”現場監督”の地位を受け入れたということは案外ウマがあったのかもしれない。
僕はといえば、モウリーニョの就任は大歓迎であった。前章で述べた実績に関しては言わずもがなである。また、確かに今のトッテナムはポチェッティーノの指導によって選手の実力が上がり、上位争いに顔を出すまでになった。しかし、是が非でも頂点に立ってやるという精神、いわゆる勝者のメンタリティがまだ備わっていないーそれはCL決勝の開始26秒でハンドによるPKから先制点を許し、そのまま意気消沈して負けたことからもわかるだろうー。モウリーニョはそんな勝者のメンタリティを十二分に分かっている。それを、トッテナムの選手たちに植え付けてくれることを僕は期待した。
モウリーニョには成果は上げるが3年目を迎えるとチームが瓦解する、という”法則”があるらしい。確かに、レアル・マドリードではイケル・カシージャスやセルヒオ・ラモスらと、マンチェスター・ユナイテッドポール・ポグバらと対立し、解任されたという経緯がある。しかし、ー今のートッテナムには幸か不幸かそこまでモウリーニョに歯向かうほどの我を持っている選手はキャプテンのウーゴ・ロリスやエースストライカーのハリーケインを筆頭にいないー唯一反抗しそうなダニー・ローズは冬にレンタルでニューカッスルに移籍をした。さようならー。そんなわけなので、モウリーニョには存分にトッテナムで辣腕を発揮し、是非トッテナムを末長くトップ争いができるようなチームに変えてほしいと思う。
ところで、僕はモウリーニョがトッテナムの監督に就任するにあたり、彼のことを知ろうとありとあらゆる媒体に目を通した。その結果、僕が感じたことは”モウリーニョって原辰徳みたいだなぁ”ということだ。この二人の共通点は①アジテーションが上手い②批判を恐れない③会見が面白いということだろう。
まず、①について説明する。モウリーニョはこれまで、チェルシー、インテル、レアル、マンUで指揮をとり、その全てで何かしらのタイトルをとっている。原辰徳も、巨人の監督としての実績の他にもWBCで世界一をとっている。どちらも「そりゃあれだけ戦力がいればね」と言われるが、戦力がいたところで監督に統率力や求心力がなければ勝てないのは堀内恒夫が証明してい・・・ゲフンゲフン。
ビッグチームにいるような人間はエゴイストばかりだ。そのエゴイスト達のベクトルを一つの方向に向けて、物凄い力を発揮させる。これが監督のー最もと言っていいくらいー重要な役割なんじゃないかと思う。
次に、②についてだ。まず、両者共に采配に批判は多い。原辰徳についてはつい最近も野手の登板が物議を醸したばかりだ。他にも内野五人守備などで批判がされたこともあった。一方のモウリーニョもいわゆる”バスを止める”戦術が”美しいサッカー”とは言えず、つまらないサッカーをするという点で批判がされているらしい。
この批判について個人的見解を述べるのであれば、プロスポーツの第一のーそして絶対的なー目標は勝つことである。そのために皆全力を尽くすのであり、それが時に奇抜であっても、時につまらなくても、最終的に勝てればそれに勝るものはないと思う。
最後に③についてだ。原辰徳もモウリーニョもマスコミを使うのがうまい。前者の場合は不甲斐ないピッチングをした選手に対し「ニセ侍」と評したり、「砂遊びは卒業しなければならない」と言って選手の奮起を促す。後者の場合は、自らを「スペシャルワン」と称したり、他チームの監督を「失敗のスペシャリスト」と評したりするなどし、自チームへの注目を集める。とにかく、両者とも今日は会見でどんなことを言ってくれるのだろうか、と人々をワクワクさせるのだ。
恐らくビッグチームを率いるにはこれらの要素は必要なんだろうな、と感じる。
そんなモウリーニョが就任してから、2019年の終わりまでのトッテナムは、CLの決勝ラウンド進出を決めた。そして、プレミアリーグでは8試合を戦い、5勝2敗1分の勝ち点16という数字を記録し 、一時は絶望的なように思えたCL圏内も狙える位置にまで上がってきたのだ。しかし、好事魔多し。この後トッテナムは2つの問題に頭を悩ませることになる。
第3章→https://charles262510.hatenablog.com/entry/2020/08/30/191216