2017年9月22日
人には誰でも忘れられない瞬間がある。
いや、その時の風景、匂い、感情がまるで写真のように切り取られて直接心に焼き付いているものと言い換えた方が良いかもしれない。
僕にとって2017年9月22日の昼休みの時間に大学の一階のベンチでみたスマホの画面がそれだ。僕は大学でひたすらTwitterのトレンドに上がっていた「あるもの」を一心不乱に検索していた。
ーーー「あるもの」。日付でピンと来る人は相当なSMAPファンだろう。ジャニーズ事務所から独立した稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の3名がオフィシャルファンサイト「新しい地図」を立ち上げたことを朝日新聞、東京新聞の両紙で発表したのだ。
瞬く間にそれはTwitterなどのSNSで拡散され、様々な人が知ることとなった。
この知らせは僕を含めた多くのSMAPファンにとって久々に訪れた晴れの日だった。
2017年9月21日まで多くのSMAPファンの心は疲れ切っていた。事の発端は2016年1月に起こったSMAP解散騒動。本人たちの口から語ると銘打ち生放送で行われたスマスマでの会見はあれほどまでに日本を熱狂させたスーパースターたちとは思えないほどやつれた表情で行われ酷くグロテスクなものを見せつけられた気分にさせられた。さらに8月の2016年をもっての解散が発表された。そして、2017年9月9日での稲垣、草彅、香取のジャニーズ事務所からの独立(便宜上ここから独立組という表現を使う)。これで事実上「SMAP」の再結集は不可能となった。
そしてその頃から独立組には不穏な空気が流れ始める。特に香取慎吾に対してのマスメディアを中心としたバッシングはなかなかのものであった。例えば、「彼が解散を強行した」「彼は引退して留学する」や、もっと酷いものだと「彼はマネージャーがいなくなった事で精神的なノイローゼから過呼吸の症状が出ている」といったオイオイあんた等一体全体彼を何歳だと思ってんだよ的な報道までなされた。
そしてついに彼が司会となって毎週生放送で16年延べ699回も放送されていた「SmaSTATION‼︎」も9月24日での終了が発表される。これが独立した影響に依るものなのは明白だった。
他にも独立組それぞれが持つレギュラー番組の打ち切りの噂は絶えなかった。
過去の例から見てもジャニーズ事務所と揉めて独立した人間が再び表舞台に戻ってくるのは難しいというのもファンは承知していた。
どんなに楽観的なファンでも「もしかしたらこのまま彼らのことを観られなくなってしまうかもしれない」だからこそSNSや番組ホームページなどに意見を投稿したりして必死に応援したのだ。
それ以外にも例えばそういうことは苦手だからやらないというファンもいただろう(まぁ僕だが)。だからといって彼らのことを応援する気持ちがないわけでは当然になく今後観られなくなるのは大変に悲しいものがあった。
そんな気持ちが約2年間続いたのである。そんなもん疲れるなという方が無理があろう。
しかし、2017年9月22日あの広告によってファンの心は一気に晴れる。
これが松平定知キャスターなら間違いなく「今日のその時」と言っていただろう。曇天が続いていたファンの心をこの青空の画像で一気に快晴へと導いたのだ。そして、なぜ新聞広告なのかというとファンへのアンサーだという。
そう、彼らは自分達だって本当に「誰からも習ったことのない」苦しい経験をしたにも関わらずこの2年間必死に応援をしてきたファンを第一に考えたのだ(実際彼らは「本当にゼロからのつもりで」と言っていた。)。このファンへの姿勢は彼らがSMAPの頃から続けてきたものと何ら変わらないものだった。
今までの苦労や苦しみが報われたその日のファン達は思い思いの解釈で「新しい地図」を楽しんでいた。
さらに新しいデビュー日とも言えるその日「おじゃMAP」の収録で香取、草彅がロケをした。その中でストリートダンスをしたのだが、奇しくもその日の天候は彼らがSMAPとしてデビューした1991年9月9日と同じ土砂降りの雨の中で行なった。こんな節目に何か因縁めいたストーリー性を出せるのも彼らがスーパースターである所以だろう。
「ずっとずっとこんなふうに遊び続けよう」彼らにとっての遊び場がもうなくならないことを願う。