さらば高橋由伸。どうなる巨人。

とにかく「カッコイイ」選手だった。野球を観始めたばかりの人は老若男女問わず「カッコイイ」選手を探す。そして、それは示し合わせたわけでもないのに不思議とその「カッコイイ」と思う選手は共通するのだ。では、2000年代のプロ野球で誰がカッコイイかを挙げると必ずこの人の名前が挙がる。

そう、高橋由伸である。断っておくが僕は高橋由伸が好きだったわけではない。むしろ嫌いであった。まぁ理由は 僕にサインをくれなかったというしょーもない理由なのだが、小学生の僕にとっては野球選手のサインとはそれほどの価値があり欲しかったものなのだったので由伸ファンの方はどうか許して欲しい。

だけれども、だ。そんな由伸が嫌いな僕でもスコアボードに書かれる「高橋由」の字にはカッコ良さを感じたし1番バッターとしてホームランを量産する姿、怪我を恐れることなく体を張って守るその姿には純粋に憧れた。

2009年に一打席しか打席に立てずヘルニアの手術をした際には「ああ、もうこれで由伸も見納めか」と思った。しかし彼は翌年戻ってきた。外野のグローブとファーストミットを抱えて。そして例えば2013年、杉内がノーヒットノーランを達成した際には田中マー君から試合を決めるホームランを放ち健在ぶりを発揮。選手生活最晩年には代打の切り札として常勝の原巨人において一振りで試合を決めるバッターとなっていた。まさに生え抜きが生んだスーパースターと言ったところだろう。

雲行きが怪しくなったのは2015年秋である。原辰徳が退任を決めるとまだ現役であった由伸に監督の椅子が回ってきた。それも外堀を埋める形で。その就任は指導者としての実力（由伸はコーチ兼任でシーズンを過ごしたこともある。）が買われたのではなく、発覚した野球賭博により付いたダーティーなイメージを回復させるためのものである事はファンの目には明らかであった。（ここで僕は巨人という球団が心底あほらしくなり冷めてしまったのだ。）

この時多くの巨人ファン…いや、プロ野球ファンは巨人への入団経緯も相まって由伸に同情をした。

そしてこの3年間「地蔵」「メモ魔」などと呼ばれながら斜陽になりつつあるチームの監督をしたのである。そして今日、2018年10月3日、由伸の辞任が発表された。恐らくは球団からも去ることになるであろう。

彼ほどいわゆる「タラレバ」が言われる野球人も少ないであろう。もし、慶應からプロ野球に進む時ヤクルトに進んでいたら…？もし原辰徳が退任を決意した際に野球賭博なんてアホな事がなければ…？どちらも高橋由伸本人に非があるわけでは無いので、余計に虚しさが残る。

と同時に巨人ファンにとっても辛い3年間だったと思う。由伸が監督をしていた際よくネットの書き込みなどで「批判はしたいけど監督になった経緯を考えると出来ない」というものが散見された。

僕は常々、ファンは時にチームを応援し、時にチームを批判する事でチームの勝利を喜べるものである、と思っている。つまり、批判も応援と同じくらい大切なのだ。もちろん誹謗中傷は論外であるが、例えば「あそこなんでバントなんだろう」とか「あそこでなんであいつ出すんだよ」などの批判はそれだけチームに対してガチになれている証拠である。だが、少なくともこの3年間巨人ファンはあまりその批判ができていなかったように思う。批判している層も先に述べた由伸が何もしないことへの批判だったり、批判の矛先がフロントに向かうこともあった。要するにファンがチームに没入する事ができなかったのである。

だからこそ、このタイミングで由伸の辞任は非常に残念でもある。岡本和真という4番がブレイクし、3年目にして少しずつではあるが由伸監督のチームカラーも出てきた。そしてまた少しずつファンがチームに没入していく気運も感じられていた。それ故に来年由伸が監督を続けたらどうなっていただろうとの思いもある。

それはひとまず置いておいて、まずは高橋由伸選手、そして監督お疲れ様でした。先にも書いたように決して好きな選手ではなかったけど、憧れていた選手でした。僕がいうのもおこがましい話ですが、まずはゆっくり休んでください。

そして巨人である。平成のプロ野球を支えたスーパースターはいなくなった。野球賭博などのここ最近の不祥事に加えここ最近の弱さですっかり球界の盟主たる威光も薄まってしまった。このままいくと巨人は球界の盟主ではなく「ただの一球団」になりかねない。巨人はこれからどこへ行くのだろうか。これからの巨人の行く道が楽しみである…と言っておこう。期待を込めて星4つっていうやつだ。