イチブがゼンブ①
世の中には色々なエンターテイメントがある。
僕の場合だと「プロ野球」がそれにあたる。
プロ野球にはある種の非日常感があり、その非日常感がエンターテイメントへと繋がっている。そしてそのエンターテイメント性を求めて人は球場に行ったりテレビその他の媒体で非日常を楽しむのだろう。
そして、「ファンあってのプロ野球」などの標語があるようにファンも一体とならなければそのエンターテイメント性は生まれない。
つまり、エンターテイメントとファンというのは不可分なものなのである。
ところが最近、この「ファン」のあり方が問われている。
例えば今年リーグ3連覇を達成した広島カープ。「カープ女子」なる言葉が誕生したり、カープの本拠地であるMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島が日本の野球界には珍しい様々な試みをしている事でこれまで広島県民の「おらがチーム」的なイメージが強かったが一気に全国的人気を誇るチームとなった。
もちろんそれ自体は非常に素晴らしいことである。人気が全国的なものになったということは球団の企業努力が実を結んだ証拠であるし、選手だって自分を応援してくれているファンが多くて嫌な気持ちになる選手はいないはずだ。しかし、一気に全国的なチームになったことで生じる弊害もある。
その代表的なものとして、神宮球場でのトラブルを挙げたい。
野球は基本的にホームチームを応援する人は一塁側からライト側で、ビジターチームを応援する人は三塁側からレフト側で応援する、という棲み分けがされている。これはお互いのファンが衝突し不要なトラブルを避けるという意味合いもある。
これは野球を観に行った人ならわかると思う。しかし、初めて観戦する人にそれを理解するのはなかなか難しい。
神宮球場は比較的チケットが取りやすく、一塁側に広島のチームカラーである赤がチラホラ見えるのだ。こうなるとヤクルトファンは苦言を呈す。当然である。
問題は広島ファンの中で客がいないところに行ってなにが悪い的なスタンスの人もいることだ。こうした結果、広島ファンに対して非常に悪いイメージを持っている人が多くなっている。
もちろんこれはごく一部のファンの話である。しかし、悲しいかな「悪目立ち」という言葉があるようにその一部のファンの悪しき行動が全部の行動に映ってしまうのだ。
こういう時に本来指摘すべきなのはいわゆる「古参」とされるファンでなければならない。
僕は本来「〜すべきだ」だの「〜しなければならない」だなという話は好きではない。「なんで楽しみに来ているのにそんなこと言われなあかんねん」となるかもしれないからだ。というか僕がそういうタイプである。
だけれども、ここは「べきだ」論を使うしかない。なぜならここで古参ファンが指摘をしなければ次に待っているのは公式から、すなわち球団からの規制だ。
これをやられるとファンには自由がなくなる。
例えば贔屓チームが異なる友人同士で野球を観に行くときなどバラバラに座るかバックネット裏で観るかくらいの選択肢しか残らなくなる。
実際に僕も懸賞でチケットが当たった際に相手チームファンの友人を誘おうと思ったがそういった規制で断念した、という事もある。それだけ公式の規制というのは重いものなのだ。
今、野球観戦には多種多様な楽しみ方がある。選手を熱狂的に応援したい。友達とのんびり喋りながら野球を観たい。写真を撮りながら野球を観たい。これらの楽しみが規制によって制限されてしまうのは悲しい限りである。
だからこそその前に自制をしなければならない。こうすると「じゃあ俺の楽しみが制限される」というような反応があるかもしれない。だがある程度それは仕方がない。不特定多数が集まる場所で全員が100点満点で楽しんだというのは無理な話なのだ。10人中3人が100点だが後の7人は10点しか楽しめなかったというよりも、10人全員が70〜80点楽しめたならそちらの方が良いだろう。
野球観戦に限らずエンターテイメントは楽しい。
その楽しみを全員が享受するためにはある程度のマナーは不可欠だ。でも、そのマナーは簡単で人の迷惑にならないようにする、その一点だ。分からなければファン同士で指摘し合う。これがりそうだろう。
マナーは本当に少しの意識と声かけで変わる事だと思う。
もうこれ以上規制が増えない事を野球ファンの1人として切に願う。
この話、続きます。