charles262510’s blog

主に野球。時々SMAP及びTEAM SHACHI。ごく稀にその他の事。

仮面ライダークウガと東京スカパラダイスオーケストラ

綺麗事がいい

 もう20年ほど前の話である。

 当時5歳だった僕は殆どの5歳男児と同じ様に日曜日の朝に眠い目を擦りながらある番組を観ていた。「仮面ライダークウガ」である。その中でこんな場面があった。

 

 女優になることを夢見る女性「朝日奈 奈々」は、尊敬していた演技の先生を未確認生命体=グロンギに殺されてしまう。無念の死を遂げた先生の為にも努力を重ねていた奈々だが、彼女が受けたオーディションの課題は「好きな人を目の前で未確認生命体に殺されたときの芝居」だった。更に、同じオーディションを受ける女性から「実際に先生を殺された経験が演技の役に立ちそうで良かったね」という旨の悪質な嫌味を吐かれてしまう。

その嫌味に深く傷ついた奈々は、普段の朗らかな様子からは想像できないほど激怒し、
「誰かを殺してやりたいと思ったことってある?」、「(嫌味を吐いた女性を)引っ叩きにいってもいいですよね!?」
などと発言するが、奈々の知人である五代雄介=仮面ライダークウガは、
「許せないねそれは……」「だから行くべきだと思う!」と、奈々の憤りに共感しながらも、

「でも、おれはこれ(拳)を使ってすごく嫌な気持ちになった。大事なのは『間違えてる』ってことを伝えることじゃないかな?」「こう(殴)したら、こう(殴)来るかもしれないだろ?そしたら、またこう!こう!(殴り合い)ってならない?」 と続け、暴力を振るっても問題は解決しないことを伝えようとした。
彼は悪質なグロンギとの戦いで憎悪に支配された経験があり、憎しみに支配されたまま暴力を振るうことの危険性と虚しさを、身を持って味わっていたのである。

しかし、雄介がクウガとしてグロンギと戦っているという事情を知らず、彼のことを暴力とは縁遠い気楽な人間だと思い込んでいた奈々は、雄介の言葉を誰にでも言える他人事の慰めと受け止め、「さっきから五代さんの言ってること、綺麗事ばっかりやんか!!」と絶叫してしまう。

雄介は「うっ……そ、そうだよ!」と彼女の指摘を半ば認めながらも、「でも!だからこそ現実にしたいじゃない!本当は綺麗事が、いいんだもん!!これ(拳)でしかやり取りできないなんて、悲しすぎるから!」と語った。

 

(引用元:https://dic.nicovideo.jp/a/%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AF%E7%B6%BA%E9%BA%97%E4%BA%8B%E3%81%8C%E8%89%AF%E3%81%84%E3%82%93%E3%81%A0%E3%82%82%E3%82%93

 

 「クウガ」は人格形成に必要な様々なことを僕に教えてくれたのだが、その中でも最も心に残っているのが、このシーンだ。ー本題から逸れるので詳述はしないが、仮面ライダーという勧善懲悪もので済ませる事も可能であったにも関わらず、あえてこのシーンを子供向け番組で扱った制作陣にも拍手が贈られるべきだと思うー。

 このシーンは、いつからか僕の中で重要な指針ととなった。「綺麗事の世の中」を作りたい、「綺麗事の世の中」を作ろうとする人たちに少しでも貢献したい。そんな事を望むようになった。

 

 だが、現実は厳しい。「綺麗事の世の中」を作ろうとする人達を陰で笑う人、その邪魔をする人を、ーそれも身近でー僕はたくさん、見てきた。そんな人達に接する度、もしかすると、「綺麗事の世の中」を望んでいる人間というのは自分しかいなくて、「綺麗事の世の中」を作るほどの才覚もない僕がいくら「綺麗事の世の中」を望んだ所で、それは女の子に一方的な片想いをしそれが破れた後10年後に両想いになるのと同じ位難しい事なのではないかと思うようになった。

 

スカパラ緊急ライブ

 そんな悶々とした気持ちを心の何処かに抱えた中で昨日の東京スカパラダイスオーケストラの緊急生ライブを観た。

 

 恐らく、僕がスカパラのファンを名乗ったらスカパラファンの方に怒られそうだなと思う位にはスカパラについてそんなに詳しく知っている訳では無いのだが、それでも彼らの演奏が素晴らしく、そして何より楽しそうに演奏する姿が好きなのでワクワクしながら昨日の20:00にYouTubeの配信を観た。

 

 もちろんスカパラはそんな僕の期待を裏切らずー当たり前であるー素晴らしいとしか形容が出来ないライブをしたのだが、そんな中で僕が一番心を揺さぶられたシーンがある。それは配信も終盤を迎え、もういよいよ残り1曲となった時に、谷中敦が視聴者へ向けてある「手紙」を朗読し始めたのだ。

 

 

 この「手紙」には本当に胸が熱くなった。少し大仰な話になるが、今の世の中は大変な時期に差し掛かっている。恐らく僕が知らないだけで苦しんでいる人も沢山いるのだと思う。けれど、ー仕方がないこととは言えー報道などで取り上げられるのは苦しんでいる人を更に苦しめたり、悲しんだりさせる様な人ばかりだ。そういった報道が増えると、必然的に世の中に「良いヤツ」なんていない様にも思えてしまう。

 

 ところが、この「手紙」では谷中敦は、スカパラはそういった「良いヤツ」はこの世の大多数と信じて疑わず、そしてそんな「良いヤツ」の為に、ためだけに「手紙」を書いたー少なくとも僕はそう感じたー。

 スカパラは「綺麗事の世の中」を信じて疑っていないのだ。そして、そんなスカパラの様な人たちがいて闘っている限り、「綺麗事の世の中」を作る事ができるのではないのか、と強く、強く思えた。

 

 この日スカパラが最後に演奏したのは、とびきりの「綺麗事」ソング、風のプロフィールだった。

淀みなく流れる川の様に優しさで合流しよう

 僕はこの曲のこの歌詞が本当に大好きだ。