charles262510’s blog

主に野球。時々SMAP及びTEAM SHACHI。ごく稀にその他の事。

プロ野球コロナ狂想曲

激震が走った日

 2020年6月3日、プロ野球界に激震が走った。巨人が当初予定されていた西武との練習試合を急遽中止したのだ。マスコミはそれについて巨人の中からコロナウイルス陽性反応を示した選手が出た為だと報じた。

 せっかく開幕に向けて光明が差したのにまたしても振り出しに戻るのか。多くの野球ファンが心配した。

 ところが、その後事態は奇妙な方向へと進んでいく。まず、巨人が練習試合を中止にした理由について、6月2日の西武との練習試合「後」に行ったPCR検査で坂本勇人、大城卓三の両選手がPCR検査で「微陽性」を示した為だと発表をしたのだ。

 この発表は多くのプロ野球ファンに突っ込まれてしまった。大きくまとめると以下のようになるだろう。

①どうして2日の試合前に中止を発表しなかったのか

②そもそも「微陽性」ってなんだ。

 確かにこの2点は振る舞いとして違和感があるように思える。今回はこの2点について考えてみたいと思う。 

 

①どうして2日の試合前に中止を発表しなかったのか

  コロナ感染者が巨人から出たのではないかと噂されていたときに多くのファンが心配していたことの一つとして、「え?ライオンズの選手は大丈夫なの?」というものがあった。そしてその心配は感染者が2日に出場をしていた坂本と捕手の大城であったことから余計に大きくなった。

 

 そもそも野球はフィジカルコンタクトが多いスポーツではないがそれでも多少なりとも接触が生じるスポーツだ。その中でもキャッチャーというポジションは打者との距離も近く、一番相手チームと接する機会が多いポジションと言える。そんな大城が陽性と発表されたのだから、西武の心配をするファンがいるのも至極当然のようには思える。

 だからこそ「どうして2日の試合前に中止を発表しなかったのか」という声が上がるのも当然だろう。何も中止にしなくても、少なくとも坂本と大城さえ出場させなければ、西武の選手に対するリスクはかなり減らせたはずだ。

 この問いに答えるためにはまずは両選手の感染発覚の経緯を振り返るべきだろう。

 まずは5月27日、巨人が選手、スタッフ総勢約220人のうち、希望する者に対して対し「独自」で抗体検査の実施を発表。これは大学医学部の研究に協力という形で行われたものだ。

news.yahoo.co.jp

 その検査は5月29日〜31日にかけて行われ、6月1日にうち4名に抗体が確認された。そこで6月2日の夕方に4名がPCR検査を受けたところ、坂本、大城の両名の陽性が確認されたのだ。

  つまり、坂本、大城に関して言えばやらなくてもいい検査を受けた結果陽性反応が出てしまったのだ。6月1日時点での医学見地の立場を受けて出場したことに対して球団及び選手が非難されるのはあまりにも酷ではないだろうか。

 ①に関して言えば巨人の判断は責められないと僕は思う。

②そもそも「微陽性」ってなんだ。

 次に②に移ろう。僕はこれに関しては巨人のミスだと思う。

 そもそも「微陽性」とは、極めて陰性に近い数値だが陽性反応が出てしまったということをさすらしい。僕もコロナウイルスで実施されるPCR検査について調べた事があるのだが、PCR検査の場合だとウイルスの死骸にも反応をしてしまい陽性反応となる事があるそうだ。それを専門家は「微陽性」と定義づけた。

 恐らく、「微陽性」と名付けた専門家も専門用語を使わずにわかりやすく伝えるためにそういう言葉を選んだのだろう。要はファンを安心させたかったのだと思う。だから巨人もその言葉を使って発表をした。

 しかし、これは大きな間違いだと考える。少なくとも6月2日時点においては「微陽性」なる言葉は一般的ではなかった。この言葉が余計にファンを混乱をさせたように思う。これは僕の私見なのだけれども、一般人に伝わるような努力をしないで簡単に新しい言葉を作るというのは知的誠実さにかけるのではないだろうか。これによって”何か”を隠しているのではないかという印象をファンに与えてしまった(僕は観ていなかったのだけれども、この言葉の意味について議論をしているテレビ番組もあったらしい)。

 少しでも疑わしい事があるとファンは一気に不信に陥ってしまうことは想像ができたはずだ。もう少しうまい言葉の選び方はできなかったものかと考えてしまう。

 

騒動の先に

 ①②を踏まえた上で個人的な意見を言わせてもらえれば巨人の対応は悪くはなかったと思う。少なくとも報道を見る限り巨人の対応がまずかったのは「微陽性」だけだ。これに関しても前述のように専門家が用いた言葉を引用しただけだ。専門家のお墨付きの「甘い果実」に飛びついた巨人をそこまで責めることはできるだろうか。

 一方で気になるのはNPBの対応だ。巨人は「独自」で抗体検査をした結果このような事態を招いた。もし巨人がこのような対応を取らなければ今回の騒動はなかったであろう。以前、僕はコロナ禍におけるプロ野球の対応に関して評価をする記事を書いた。

charles262510.hatenablog.com

 今もその評価に変わりはない。ただ、選手が感染しているか否かという観点からの検討は欠けていたように思う。NPBは6月8日に12球団全選手にPCR検査の実施をすることを発表した。

news.yahoo.co.jp

 しかし、これに関しては後手に回ったと言えないだろうか。少なくとも、巨人やソフトバンクが独自で抗体検査を実施すると発表した時点でNPBもなんらかの対応を示した方が良かったように思う。それをしなかったことで、「独自」の「やらなくてもいい検査」を行った巨人が対応について非難を受けた面があることは否めない。何かを隠そうとしたわけではなく、対策の一歩先をいった所が非難されてしまうと今後真っ当な対応が望まれなくなってしまうのではないかという懸念もある。

 だからこそ、これからはNPBに旗手となって対策の先導をすればこうした事態は防げると思う。今後このような事態はさらに増えてくるだろう。その時にNPBがどう振る舞うか。いち野球ファンとして注視をしていきたいと思う。