charles262510’s blog

主に野球。時々SMAP及びTEAM SHACHI。ごく稀にその他の事。

DREAMER

 「第一回選択希望選手 読売 (本名)」これが野球を始めた頃からの僕の夢だった。

 もちろん、少年野球の時には自分に野球の才能がー全くない訳ではないが、プロになれる程の才能はーない事に気付いていた。

 それでも、野球を一時辞めた中学校時代も、3年間補欠で、最後の夏の大会で監督のお情けでベンチ入りをさせてもらい、結局1打席も立たないまま1回戦で敗退した高校野球時代も、浪人時代も、なんなら野球をしなくなった大学生活でも、もしかしたら自分は何かの間違いでどこかの球団に指名されてプロ野球選手として活躍出来るんじゃないかというー妄想に近いー夢を持ち続けていた。

 

 自分でも流石にバカげた妄想だとは思っていたが、その反面そういう気持ちがあるという事は僕はまだまだ「野球少年」なのだろうと思っていた。

 

けれども、今年のある時期からそういった妄想をする事が少なくなった。

ーある時期。それは3月21日のことだ。そう、シアトル・マリナーズイチローがこの日を最後に現役の引退を発表したのだ。

 

ICHIRO

 今年、イチローが日本でおそらく最後の試合をするとなったからどうしても観たくて2試合分のチケットを買い、観戦をした。

 そして、2試合目。イチローは現役を退く事を発表した。試合終了後、仲間と勝利を喜び、そしてダグアウトへと去るイチロー。もう引退するのは分かっている。延長にも入ったので時刻はもう23:00を回っていた。東京ドームの照明はすでに一段階落とされて薄暗くなっていた。それでも、多くのファンは最後にもう一度イチローを一目見たいと思った。僕もその1人だ。そんな思いがファン同士言葉は交わさずとも一致したのだろう。イチローコールが自然発生的に起こった。

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 数多くの野球を観てきたが、そんな事はもちろん初めてだった。そして、そのコールはマリナーズにとっても予想外だったのだろう。後で会見を見るとイチローも驚いたらしい。20分以上そのコールは続き、彼は再びダグアウトから姿を現した。

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マリナーズ公式Instagramより)

 そして、イチローは場内をゆっくりと一周し始めた。選手も、スタッフも、ファンも、イチローしか見ていない時間だ。

 1人の選手が引退する。それはすごく悲しいことであり、実際に僕は泣いていたと思う。それでも僕はすごく幸せな空間にいたなとも思った。

 

 何故か。以前、イチローは野球選手としての引退を「死」と表現をし、笑って「死」を迎えたいと言っていた。つまり、その表現を借りるならばあの時間は野球選手イチローの葬式だったのだ。ただ、笑顔で終われる葬式が珍しいように、引退もまた大勢の人に囲まれて笑顔で終われる事は珍しい。

 ところがイチローは笑顔で終われた。思えばイチローはストイックという言葉すら当てはまらないくらい、こと野球に関して自分を追い込んできた。そういう人間が笑顔で終われたことで、何かに打ち込む人間はどういう形であれ最後は幸せな結末を迎えられるーそんな事を僕自身が学べたのだろう。しかもイチローから。だからこそ僕は幸せに思えたのだ。

 

野球青年

 思えば、僕が野球を始めた時からずっとイチローMLBで輝いている選手だった。その時は意識していなかったが、僕はずっとイチローが好きだったのだ。そんなイチローが第一線で活躍をしていたからこそ、僕もまだ「野球少年」でいられたのだろう。

 しかし、イチローは引退した。そこで「野球少年」としての僕もまた一つの「死」を迎えたのだろう。ただ、憧れの選手と一緒に(例えジャンルは違えど)「死」を迎えられたのはこの上なく幸せな事なのかもしれない。

 

 そして、それをこういった形で(人の目にはあまり触れないけれども)文章に残せる事も。

 『深夜特急』というエッセイがある。その中で沢木耕太郎は後書きでこの話を書く事で自分の青春に別れを告げられるという事を書いていた。イチローの引退で野球少年としての僕は「死」を迎え、そしてこうしてブログに書く事で「供養」を終えたのだ。

 幸い僕にはまた別の夢も出来ている。これは妄想ではなく是が非でも叶えたい夢だ。だからこそ野球少年の自分にも未練なく別れを告げられた。

 2020年はすぐそこまでやってきている。僕はこれからは「野球青年」を名乗っていこうと思う。

 

 最後に、改めて、ありがとうイチロー

 

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